中世の音楽  ノートル・ダム楽派

Ecole de Notre-Dame de Paris 1163-1245

  • アンサンブル・ジル・バンショワ
  • ドミニク・ヴェラール (指揮)
  • 1986年 セッション録音

アンサンブル・ジル・バンショワが、Harmonic Recordsに録音したノートル・ダム楽派作品集の1つ。

1979年に設立され、2014年現在も活動している同アンサンブルの、初期の録音。
系統立てて聴いていないものの、長い活動期間の中で、アンサンブル・ジル・バンショワはスタイルを変化させているようだ。
1980年代終盤のある時期までは、ヴェラールの声の美しさ、柔らかくてスムーズな歌い回し、繊細かつ伸びやかな表現が、そのまんま団体の特色になっている感じだった。この音源は、その典型の一つで、まことに香ばしい。
この録音の後も、アンサンブル・ジル・バンショワはノートル・ダム楽派の音楽を録音しているけれど、味付けは変化している。

この音源でのアンサンブル・ジル・バンショワは、オルガヌム(初期の多声音楽)を重層的に厚く響かせるのではなく、各声部の伸びやかな線の動きを多彩に編み上げる感じで進める。そして、メンバーは美声ぞろい。この種の楽曲の表現としては、解放的で華やかに聴こえる。

オルガヌムの原始的な和声は、ときとして(あるいはしばしば)、現代人の耳には異質な調子を帯びると思うのだけど、この音源にはそれをあまり意識させない。あるいは、異質さを好ましく感じさせる。こうした表現が、楽曲本来の姿に近いのかはともかく、滅多にないくらいに、ノートル・ダム楽派の音楽を親しみやすく聴かせてくれる。

圧巻は、第1曲目のNATIVITAS GLORIOSE VlRGINIS MARIE。名前が残っている、数少ないノートル・ダム楽派の巨匠ペロタンの作品。
祭典的な華やかさ、親しみやすい旋律、多彩で精妙な色調。胸躍る音楽に仕上がっている。使っている技法は太古でも、活き活きと光彩を放っている。
この解釈の、学究的な意味での妥当性は分からないが、ヴェラールらは目覚ましいインスピレーションを聴かせる。


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